GW、いかがお過ごしでしょうか。

 昨日の夜に12チャンネルで、都営荒川線周辺をブラブラ降りてはブラブラ歩く、という番組をやっていて(他の路線もあった。要するに遠いところにはいけなくて都内でくすぶっている人を対象にした「近くでも遊べますよ」という企画)、そういえばこの都内の路面電車に乗ったことがなかったなあ、と出かける。もうひとつ世田谷線というのがあって、そっちはボロ市の時とかに乗ってますが。

 妻&時生隊と僕&晴子隊に分かれて出発。時生隊はさらに舎人ライナーにも乗ったそうだ。

 僕らはまず渋谷から副都心線で(実は僕はこれにも乗ったのは初めてのことである)雑司ヶ谷に行き、そのすぐ近くにある鬼子母神前駅から荒川線。それで大塚駅まで行きました。なにしろ一両しかない電車で、それなりに混んでました。どこまで行っても160円。まわりは住宅が多くて、けっこう線路に上下の起伏もあって、なんかテーマパークの乗り物にでも乗ってるみたいでけっこう面白い。おばあちゃんが車椅子の晴子を見て「大変だねえ」とか話しかけてきたりする。

 大塚駅周辺をうろうろ。学生時代は西武池袋線沿線に住んでいたので、こっち方面もまったくの未知の場所、というわけでもないのだが、かといって大塚で降りて何かをした記憶もない。なんだか新鮮である。日曜なので閉まっているお店も多かったが。

 駅前の山下書店(昔、ラフォーレ原宿の中にあったお店にはよく行った)は、チェーン店でありながら、完全に町の本屋さんという佇まいが染みついていて好もしい。エロ雑誌やエロ文庫の棚がしっかりとした面積を占めているのに圧倒された。新聞広告で気になっていたテンプル・グランディンの「自閉症感覚」という本を買う。彼女はもう60を越えているが、アスペルガー症候群の当事者で、'80年代に自閉症の本人としてはほとんど初めて自らの言葉で自分の状態を描写したことで知られる人である。オリバー・サックスの名著「火星の人類学者」にも彼女のことを書いた章がある。というか、書名になった「火星の人類学者」は、グランディンが自分のことを形容して言った言葉なのである。

 なにかご当地もののおやつでも見つけられればと思ったが、結局駅前のスターバックスで晴子はシナモンロール、僕はカフェラテ。表で食べていると、他に椅子が空いてなくて相席を求めてきたおばあさんと少し話す。

 前に入院した時に同室だった42歳の癌の女性が、もういよいよ危ないというので、お見舞いにいってきたのだそうだ。そういうご自身は舌ガンをやって、今は落ち着いているのだとか。それでタバコをスパスパ吸っていて、「タバコも高くなっちゃいましたねえ」と言うと「まだです」と笑っておられる。もう50年吸ってるので今さらやめられないと言う。「お医者さんに止めろと言われませんでしたか?」というと、「言われたけど、タバコを止めるくらいなら死ぬと言いました」。彼女のいた癌研有明病院では敷地内では一切タバコはダメで、吸おうと思ったら敷地の外に行かないといけないそうだ。だから、雨の日は傘をさして吸いに行ったと。そういうタバコはさぞかし旨かろうと思う。僕は習慣としてタバコを吸ったことがないのでその醍醐味は分からないが、今度、一箱が400円を超えるようになったら、それはそれでまた旨いのだろうと思う。

 晴子を見て、「私の甥にも脳性麻痺の子がいまして、もう30を越えましたが、ようやく歩けるようになりました。彼女もできたそうです」などと言ってくれる。いや、別に歩かそうとも思ってないんですよ、などと無粋なことは言わず、ああ、いいですね、などと適当なあいづちを打つ。