誕生日月間(1年ぶり)。

 今日、時生の小学校の60周年記念式典に出席し、この3月で退職された前の校長先生と久々にお話ししたら、このブログが更新されてないことを指摘されまして、確かにここ一年はFacebookTwitterにすっかり移行してしまったなあと自覚しました。そして僕は仕事の方でも日々、頻繁にTwitterを使って映画関係を中心に情報出しをしているものですから、それでもうあらかた自分の中にあるものを絞りきってる感じもありますね。それがいいことなのかどうかはまた別の問題ですが……。

 考えてみればパソコンなんかが出来る前は、一生のうちにほとんど文章なんか書かずに終える人だっていっぱいいたはずなんだよね。「自分はそういうことは苦手で……」と言って、本当にそれを避け続けることもできた。それが今では誰も彼もがとりあえず、なんか書けないと仕事にならない。そしてそういうものがパソコンの中やクラウドの中に夥しい量、蓄積されていく。写真だってそうですよね。フィルムの時代、オートフォーカス自動露出のない時代は、まずちゃんと写るかどうかすら怪しいものだった。ちゃんと写ってれば「あの人は写真が上手い」ということになった。今はそうじゃない。誰だってそこそこのものは撮れてしまうので、どっちかと言うと「この人は写真が下手だなあ〜」ということの方に大きな驚きと面白みを感じることもある。そしてこちらも大量のデータがあちこちに蓄積されている。僕らの世代から、急速にいろんなものが溜まるようになりました。それは私たちが命を失った後も、この世界からそう簡単に消え去ることができなくなったということです。

 知ってますか? Googleのデータセンターはアイルランドにあるそうです。税金の関係とかあるそうです。こうしたものを蓄えるために、人の生きるためのスペースが無くなっていくんじゃないかと思います。電気も凄く喰うって言うしね。

 いきなり長いぜ。誕生日月間始まりました。時生は今週の火曜日、27日で11歳になりました。僕は来週の木曜日で……まあ、もう、いいじゃないですか……。




三連休の友

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この三連休に2本の映画を家で観たいと思っていたんだけど、見事に達成しました。大体、子どもらが寝てしばらくした10時くらいから見始めて。

1本はタイのアピチャッポン・ウィーラーセタクン監督の『ブンミおじさんの森』。ちょうど国内盤のDVDが出たばかりだけど、僕は米版のブルーレイで観た。もう1本は韓国のイ・チャンドン監督の『Poetry』(詩)で、これは日本ではこれから公開になる。タイトルはそのまま『ポエトリー』かな? 去年の映画祭でやったんだけどその時は観れず、なんだか公開もされないなあと思って、これも米版のブルーレイを注文したのだけど、その後でもうすぐ公開されることを知った。まあいいや。

『ブンミおじさん』は英語タイトルが"Uncle Boonmee Who Can Recall His Past Lives"という非常に長いもので、「前世を思い出すことの出来るブンミおじさん」という意味合いだと思う。"Lives”だからその前世も一つじゃない感じだ。既にタイにあった文学作品からウィーラーセタクンがそれにインスパイアされて作った作品だという。

ウィーラーセタクンはここ何年か世界中の映画祭で話題になってる監督で、なにしろその名前からしインパクトが凄いが、僕は実際に観るの初めて。いやー、もう、なにがなんだか分からない映画です(笑)。一応ブンミおじさんが主人公なのかなあ?? とにかく幽霊になった妻は出てくるわ、猿になってしまった息子は出てくるわ、急に昔のお姫様の話が始まるわ……で、面白くないかというと、なんだがよく分からないなりに、メチャクチャ面白かったなあ! という印象が残る映画。

実は2週間前くらいに、横浜トリエンナーレという美術展に行って、そこでもウィーラーセタクンのビデオアートや写真がある一角を占拠してたんだけど、この映画の中に出てくる迷彩服の若者たち、あっちでも出てなかったか? というか、なんだろう、美術展で上映されてるビデオの映像がこの映画の中に混ざっても、大して違和感がないだろうなっていう。いわゆる一つのお話しを語る映画というよりは、断片の印象の積み重ねで観る人をある感興にまで連れて行くようなものなので、現代美術の文脈で語った方が遙かに説明がしやすいのかもしれない(僕には説明できないけど)。というか、説明なんかいらない。国内盤のDVDの宣伝文句の中に「考えるな、感じろ」というブルース・リーの名言が書かれているのだが、宣伝する人ももうどうしていいか分からなくて、この言葉に行き着いたというところだろう。そして、それはあながち間違ってないのである。

なんとなく、これと似たものを観ながら思いついたのは、パゾリーニだったり、リンチだったり、タルコフスキーだったり、アルゼンチンのソラナスだったり。でも、それらのどれよりもメチャクチャ、というよりも、素っ頓狂。「おい、オチは!?」と何度も突っ込みたくなる(笑)。

特典に監督のインタビューが入っていて(国内盤のDVDに入ってるものとは内容は違うようだ。そして米版には削除されたシーンもいくつか入っているのだが、これも国内盤には入ってない)、どうも、タイにはこういう不思議な話というのが普通にみんなで共有されているようで、それもオモロイな〜。

さて、もう1本。イ・チャンドンは僕大好きで。『オアシス』も『シークレット・サンシャイン』も極めて重いテーマながら、見終わった後に風が抜けていくような後味がある。決して爽やかというのでもないのだが。『ポエトリー』も重い話ではあるけれど、前2作のガツンとした喉ごしに比べると、ちょっと小品という感じがする。タイトル通りこの映画自体がひとつの「詩」のような味わいだ。主演の60代の女性を演じている人は(というかほとんど全編彼女が出ずっぱり)、韓国では往年の美人女優として鳴らした人のようで、メイキングのビデオで昔の映画のスチルなどを見ると、あまりにも美しいので驚いた。公開されたらみんなに観て欲しい。イ・チャンドン入門にはこれがいいかもしれない。

もう9月。

 みなさんお元気でしょうか。台風はどうでしょうか。東京は今ひとつ雨も降らず、なんか中途半端ですね。

 長かったような夏休みも終わり、ようやく我が家にも日常のシフトが帰って来つつあります。

 今年もあと4カ月かあ〜。