かいじゅうたちのいるところ

 

 金曜日ですが会社をお休みしました。

 元々、妻と二人、三軒茶屋世田谷パブリックシアターで、午後から野村萬斎の「能楽進行形」というシリーズの公演を観るつもりで休みを取っていたのですが(ちょうど三茶からちょっと行ったあたりでは、12/15&16、1/15&16にボロ市というのが毎年開かれていて、そこで茶碗や昆布を買ったりするのが定例になってもいましたし)、なんと前から観たい観たいと思っていた映画『かいじゅうたちのいるところ』の初日もこの日にあたることが分かり、じゃあ、午前はこれにも行こう、ということになりました。@TOHOシネマズ六本木。映画の公開初日の初回に足を運ぶなんて、一体いつ以来のことでしょうか(自社配給の映画の初日の様子を見に行く、というのはありますけど、それは仕事だし、そういう時は映画を観てるわけじゃなくて、ロビーの様子を見ていたりします)。

 「かいじゅうたちのいるところ」の原作は、アメリカの絵本作家モーリス・センダックの作品で、多分、今日までに、全世界で何百万部(何千万部?)売れているはずの、絵本の古典中の古典と言ってもいいものです。わが家も晴子が小さい頃には、何度この絵本を読み聞かせたか分かりません。そして最後のページで読んでいる僕が何度涙目になっていたか分かりません。

 絵本は本当に短い話なので、これが長編の実写映画になると聞いた瞬間に「どうやって!?」と思ったのですが、それを監督するのがスパイク・ジョーンズと知って「これはもしかしてすごい傑作になるかもしれない……」という直感がありました。スパイク・ジョーンズは元々ミュージシャンのビデオクリップのディレクターとしてキャリアをスタートさせた人で、その後『マルコヴィッチの穴』『アダプテーション』といった、まったく他の人には真似の出来ない発想の映画を監督した人です。どちらも大好きな映画です。

 「かいじゅう〜」は予告編からして素晴らしかったし、先に出たサントラ盤も、カレン・Oという女性と子どもたちによる歌モノが沢山入っていてやけに泣かせるものだったので、これはイケる、と思いました。そして、その予感はまったくもって正しかったと思います。

 一人でも多くの人に観てもらいたいと思います。本当に素晴らしい作品です。今年のベストワンはもう決まった、というくらいのもんです(もちろん、この先、何があるかわからないけど)。というか、生涯のベスト5に入ってしまうかも……。

 なるべく「素」の状態で観て欲しいので、あんまり書きませんが、もう、タイトルが出るカットの格好良さからヤラれた!(ほぼ全編、泣きっぱなしでした) でもって、自分が思っていたような映画では全然なかった! にもかかわらず素晴らしかったし、それが原作を裏切るものにもなっていなかった! とにかく観てください。

 公式サイトはココ

 萬斎の能は、昼食後ということもあって、半睡しながら観てたカンジですが、演目の「邯鄲」(かんたん)というのが夢の話ですので、まあその見方も悪くないかと(笑)。いわゆる能楽堂と違って、能舞台もちょっと仕様が変えてあるし、装置や照明もそんなに派手なものではないにしろ、能楽堂のような何もない空間とは違うので、これはこれでなかなか楽しめるものでした。

 終演後、4時半くらいからボロ市へ。実はいつも真っ昼間に行っていたので、この時間帯は初めて。平日ですが夕方ということで子どもたちの姿も多かったのが印象的でした。灯りが点くのも縁日のようなムードが高まってまた良いものでした。