ホームレス。

 今週もあっという間の一週間ではありましたが、幾分、余裕が出てきました。今週は割と、自分担当の仕事よりはまわりの人の手伝いが多かったかな。

 火曜日の午後、会社を早退けして、妻と共に上智大学に行ってきました。そこでホームレスに関するシンポジウムがあったので。前に「どんと来い、貧困!」という本をこのブログで紹介しましたが、その著者、<反貧困ネットワーク>をやってて去年末〜今年正月に日比谷公園で「派遣村」の村長もやっていた湯浅誠さんもパネラーの一人。今回はフランスで、サミュ・ソシアルという活動をしているグザビエ・エマニュエリさんという方のお話を中心に、東京都でホームレス対策をやってる方だとか、日本女子大でそれ関係やってる方だとか。

どんとこい、貧困! (よりみちパン!セ)

どんとこい、貧困! (よりみちパン!セ)


 朝日新聞が関係してたので、昨日だったか一昨日だったかにレポートも載ってましたが、日本における貧困の拡大(データ上では、いわゆる路上のホームレスは毎年減っているのですが、ネットカフェなどに泊まってる若年層はどんどん増えている)に対策が追いついていないのと対照的に、そのパリでやってるサミュ・ソシアルというのは、家がなくて困ってる人から24時間電話相談を受け付け、また12台の車が常に街をパトロールしては路上で困っている人を拾って、適切なケア(病気の人なら病院へ、宿がない人ならその提供etc, etc...)をしているという進歩具合を知りました。

 その活動はパリ市の政治的な決定として始まったものなのですが、その実現のきっかけが、当時はパリ市長でやがてフランス大統領の座に着く、ジャック・シラクの選挙活動的なパフォーマンスであったという話にみんな笑いました。まあしかし、こんないい成果が得られるなら時には政治家のエゴも役に立つものだなあ、と。

 その活動のために、市は建物を無償で提供し、車はメーカーのプジョーシトロエンが提供し(修理や交換も)、そのほか、鉄道、電気、ガス会社なども参与しているとのこと。一方、日本は小さなNPOが一生懸命、できる範囲でホームレスを支えているという状況で、社会の成熟度がやはりまだまだ違うなあ、というカンジ。

 そう言えば、開巻の挨拶が民主党参議院議員だったんだけど、自民党に勝ってこれから頑張ります、みたいな話ばっかりで、なんだかな〜ってカンジでした。

 しかし、なんだってまたホームレスになんか興味あんのよ?って思われる向きもあると思います。まあ、単純に社会の問題、それもこれから深刻になる大きな問題だからってこともあるんだけど、もうひとつ、ホームレスと呼ばれる人たちの中には、少なからず知的障害の方がいらっしゃる、ということがあります。これは最近まで知らなかったんだけど。

 閑話休題、今、谷崎を読んでます。谷崎潤一郎。ホントに僕は若い頃に本を読んでなかった人間で、谷崎も数年前に「刺青」を読んだのが最初かな。それも良かったんだけど、最近、翻訳家の柴田元幸さん(ポール・オースター他の翻訳で有名。村上春樹が翻訳する本は大抵彼が相談役になっている)がやってる文芸誌「モンキー・ビジネス」の最新号に、なぜか谷崎の「陰翳礼讃」が載っていた(基本的に海外の小説の翻訳がメインの雑誌なんです)。で、それがとっても良くってねえ。日本人の美意識がいかに暗いところに、「陰」にあるか、ってことをつらつら書いたエッセイなんだけど、その内容もいいんだけれど、ストンと落ちてくる文章そのものがいい。やはり「大谷崎」と呼ばれるだけのことはありますね。でもって、早速他のも何か読みたくなって、今は文庫本で「卍」を読んでます。全部、関西弁の女の一人称で書かれたものですが、これもホントに上手い。勉強になります。

卍(まんじ) (新潮文庫)

卍(まんじ) (新潮文庫)